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人混みの中を歩く長身。
私はその後を必死で追う。
なんだか、ストーカーか探偵みたいだ。
今日は変装して『優花』じゃないし。
駅前で彼が立ち止まる。
ヤバい。
私は少し離れた彼の後ろ側の植え込みに座り込んだ。
植え込みを挟んで、プライベートな彼がそこにいる。
私はそれだけでそわそわしていた。
ちらりと後ろを見るといつの間にか彼の目の前に女性がいた。
年齢的には和人と同じくらいの、スーツ姿の女性。
もしかしたら彼女?何かを真剣に話している。
私はそっと聞き耳を立てた。
雑踏の中、中々話は聞こえない。
もう少し前にでてみようかな?
そう考えた矢先。
彼女が和人の頬を平手打ちした。
高い音が響く。
「貴方のせいで…はもう帰らないのよ!」
「…悪かったと…だから」
「許さない…貴方だけのうのうと生活して…絶対に許さ…」
途切れ途切れに話が聞こえる。
何?
何の事を話してるの?
私は植え込みから身を乗り出しかけた。
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