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撮影場所に戻ると海斗はようやく手を離した。
掴まれた手がじんじん痛い。
「いきなりいなくなったから心配しただろ。探させんなよ」
口調はいつもの海斗になっている。
「ごめんなさい」
私は素直に謝った。
「ほら、着替えてこい。飯おごってやるから」
海斗は私を撮影バスに促した。
私はそれに従う。
洋服を着替えながら、さっきの事を考える。
疑惑が胸をよぎって離れない。
和人の秘密。
彼女を見つめる顔はいつもの優しい和人ではなかった。
まるで贖罪するような、辛そうな顔。
今まで見た事のない知らない表情。
気になってしょうがない。
着替え終わると、ちょうどバスの窓がノックされ、海斗が覗き込む。
「支度出来たか?行くぞ」
私は荷物を持つと、バスを出た。
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