第5章

15/16
前へ
/204ページ
次へ
料理の味は最後まで分からなかった。 さっきの海斗の話が気になって仕方ない。 『蝶の夢』でメイクを落とし、海斗が送ってくれる車の中でも、私はぼんやり考え込んでいた。 「優花。まだ考えてんのか」 海斗が運転しながら私に聞く。 「やっぱり和人さんが好きなのか?」 海斗の問いに私は慌ててかぶりをふる。 「違うよ」 「…嘘だ」 海斗が道の端に車を止めた。 私の方を向き直る。 「本当に、好きなんだろ?」 「……」 答えない私に、海斗は真面目な顔で言った。 「俺に、しとけよ」 え?と海斗を見た瞬間、海斗が私の頬に口づけた。 突然の事に一瞬固まる。 海斗は真面目な表情のままだ。 「か、海斗?」 私は動揺した声をあげた。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46983人が本棚に入れています
本棚に追加