第5章

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突然、海斗が吹き出す。 「ほら、ドキドキしなかったか?」 笑いを堪える様に私を見た。 私は我に帰り、海斗を睨み付ける。 「ひどい、冗談だったのね」 「あんな事言われたら俺がお前を好きだって錯覚しない?」 海斗は再び車を走らせる。 「『蝶の夢』は、恋人を演じる所だ。お前らだけじゃない。お客だって、役者の一人だ。どんな殺し文句を言われても演技なんだよ」 私はむくれたまま、助手席に座り直した。 「だから、本気になるな。 和人さんに深く関わったら今度はお前が傷つくぞ。その為の契約だろ」 契約。 私は海斗をちらりと見る。 確かにそうだ。 私達も恋人を演じるために思わせ振りな態度を取る。 それに本気になられたら確かに困る。 じゃあ、この想いは偽物なんだろうか。 再び前を向き、考えこむ私を海斗はバックミラーでちらりと見る。 私は気づかなかったけど、その目は辛そうな光を浮かべていた。
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