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「ただいま」
玄関から声を掛ける。
返事はない。
当たり前だ。両親は共働きで小さい頃から鍵っ子だった。
帰りはかなり遅く、顔を会わせない日は多い。
昔は寂しくて何度も泣いた。
いまではもう諦めに近いのだろう。何も感じない。
慣れって怖いな。
私は一人口許に笑みをこぼした。
部屋に入り、制服をぬぐと、私服に着替えてクローゼットからバッグを取り出す。
鳥籠から抜け出す為の魔法の鞄だ。
私は結んでいた髪をほどくと、バッグを持って部屋を出た。
玄関で靴をはきながら、横にある鏡を確認する。
普通の女の子がその中に映る。
今から魔女に魔法をかけてもらいに行く。
まるで、シンデレラの様に。
私は立ち上がると玄関を空け、外に飛び出した。
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