第1章

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「ただいま」 玄関から声を掛ける。 返事はない。 当たり前だ。両親は共働きで小さい頃から鍵っ子だった。 帰りはかなり遅く、顔を会わせない日は多い。 昔は寂しくて何度も泣いた。 いまではもう諦めに近いのだろう。何も感じない。 慣れって怖いな。 私は一人口許に笑みをこぼした。 部屋に入り、制服をぬぐと、私服に着替えてクローゼットからバッグを取り出す。 鳥籠から抜け出す為の魔法の鞄だ。 私は結んでいた髪をほどくと、バッグを持って部屋を出た。 玄関で靴をはきながら、横にある鏡を確認する。 普通の女の子がその中に映る。 今から魔女に魔法をかけてもらいに行く。 まるで、シンデレラの様に。 私は立ち上がると玄関を空け、外に飛び出した。
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