第6章

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望まれない為に殺された子供。 望まれて生まれた筈なのにほっとかれる私。 どちらもあまり変わらないな。 私の表情に気づいたのか、海斗が手を止めた。 「ごめんな、こんな話」 私は、ううん。と返事だけを返した。 メイクを終え、服を着替える。 今日はキャミソールワンピースにボレロを合わせた。 「…お前は、気をつけろよ」 海斗が髪を直しながら私に言う。 「和人さんに限ってそんな事はないよ」 笑って言うと、海斗はそうだな、と言い道具を片付けた。 踏み込めば傷つく。 なら聞かない方がいい。 このままの関係なら、私は騙されたまま幸せでいられるから。 彩希ちゃんの様に、現実の終わりを迎える事なく、彼との時間を楽しめばいい。 本気じゃない。 割りきらなければ。 私は自分にいい聞かせる様に心の中で呟いた。
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