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待ち合わせ場所には、彼はまだいなかった。
大抵和人は遅れてくる。
仕事してるから仕方ないか。
私は側にあったオブジェに背中を預けた。
二十分…
三十分…。
おかしいな、こんなに遅れるなんて。
私がママに電話をしようと携帯を取り出したその時、人混みの中から和人さんが現れた。
「…優花ちゃん、ごめん!」
走ってきたのか息が荒い。
いつもきっちりとしているスーツもなんだか乱れぎみだ。
「本当にごめん。待ったろ?」
和人が申し訳無さそうに頭を下げる。
「大丈夫です。仕事忙しいんでしょ?」
「ううん、仕事は早く終わったんだけどね…」
和人はなんだかぼんやりしている。
顔も少し赤い。
私は和人の額に手を触れた。
熱い。
「和人さん、具合悪いんですか?」
和人は、ははっと力なく笑う。
「ちょっと、微熱があってさ。薬局いって薬飲んできた」
微熱なんてものじゃない。
触った額は結構熱かった。
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