第6章

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コチコチ…。 時計の音だけが響く。 私の手は握られたまま。 熱冷ましが効いてきたのか、荒い呼吸はやや収まった気がする。 「和人さん」 名を呼んでも答えない。 時折うなされるように小さく呻く。 契約時間まで、あと二時間。 終了前に海斗に連絡して、後は頼もう。 私は立ち上がりそっと和人の手を剥がそうと指を伸ばした。 その時いきなり、私の手が引き寄せられた。 私はバランスをくずし、和人の横に倒れ込む。 和人はそのまま私を抱き締めた。 「……」 和人が何かを呟く。 なんだろうと顔をあげた瞬間。 和人の唇が私の唇をふさいだ。 いきなりの事に私は目を見開く。 慌てて起き上がろうとするも、熱とは思えない和人の力に動けない。 「か、和人さん」 私は気が遠くなりそうな感覚の中で、彼の名を呼んだ。
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