第6章

10/10
前へ
/204ページ
次へ
私は、荒い息を整えた。 「和人さん?」 返事はない。 もしかして、寝ぼけてた? 本気じゃなかった事に気付き、私は少し落ち込む。 唇には、まだ感触が残っている。 契約違反だ。 バレれば、彩希ちゃんみたいにやめさせられる。 「…絶対黙ってよう」 私は自分に言い聞かせた。 和人の腕はもう緩んで、いつでも抜け出せたけど。 私はそっと彼の胸に頭を寄せた。 時計のような彼の心音が聞こえる。 暖かい。 なんだかとても安らぐ。 私はそっと彼の胸に手を回すと、ずっとその音を聞いていた。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46983人が本棚に入れています
本棚に追加