第8章

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幸せだ。 和人とのなにげない会話。 笑顔。 繋ぐ手。 すべてが幸せで心が穏やかになる。 壊したくない。 いつまでもこのままでいたい。 「ほら」 和人が、コーヒーとハンバーガーを差し出した。 「女の子にハンバーガーはキツいよ」 「そうかな?別に気にしないよ、俺は。ハンバーガーは大口開けて食べるもんだ」 和人は大きな口を開けてパクつく。 こんな時は年の差を忘れてしまう。 私もそれに習い、口にする。 「口許、ついてる。本当に子供みたい」 笑いを堪えながら和人が言った。 「え、どこ?」 取ろうとする私より先に和人がそっと唇に触れる。 その仕草に心臓ははね上がる。 「ほら取れた」 和人は笑い、わざと指を見せた。 「意地悪」 私は、膨れながら、和人の肩を叩いた。
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