第8章

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時間が過ぎていく。 好きな人といると、本当に早い。 このまま時が止まってしまえばいい。 舞踏会で王子様と踊るシンデレラも、同じ気持ちだったのだろうか。 ふと、和人が足を止めた。 「優花ちゃん。ちょっと待ってて」 私を置いて、お土産屋さんに入っていく。 しばらく待つと、和人が手に袋を抱えて帰ってきた。 「はい」 手渡され中を見るとそこにはフワフワしたウサギのぬいぐるみ。 「あげるよ」 「え、でも」 「いいから」 私はお礼をいい、袋を抱きしめた。 暖かい。 ウサギのぬいぐるみじゃなくて。 この時間が。 このまま、帰りたくないって言ったら和人さんはどんな顔をするだろうか? 私は想像しながら彼を見上げた。
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