第8章

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沢山のお墓。 静かな空気が辺りを包む。 和人はやがてひとつの墓の前に止まった。 「久しぶり」 辛そうに墓に話しかけ、ユリの花を置く。 まさか。ここは。 「これ、俺の奥さん。ゆりって言うんだ」 和人が墓の前に座り込み、私を見上げる。 私は立ち尽くしたまま動けなかった。 「俺の奥さん、二年前に事故で亡くなったんだ。 その時、俺は残業残業で、全然家庭をかえりみない奴でさ。ゆりをかまってやれなかったんだ。 あの雨の日、本当はゆりが出掛けたいって言ってたのに、急な仕事が入っちゃってさ。約束を破ったんだ」 淡々と和人が話す。 「ゆりは、怒りもしなかった。ただ笑って俺を送り出してくれた。 そして、その日に事故にあったんだ。 点滅信号を渡ろうとした時、車にはねられたんだ」
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