第8章
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『ねぇ、今夜は早く帰れる?』 和人の鞄を持ったまま、ゆりが玄関先で声をかけてきた。 『どうかな、なるべく早く帰る様にするよ。何かある?』 靴を履きながら聞く俺に、ゆりは少し困った様な顔をした。 『…忘れちゃった?』 『え?』 『ううん、なるべく早く帰ってね』 鞄を渡し、玄関先で手をふるゆり。 それが、ゆりを見た最後だった。
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