169人が本棚に入れています
本棚に追加
目が合ってからどこか固まっていた思考が、それの拍子に自分の元へと戻ってきた。唇を固く結んで、窓から離れる。
きっと、彼がそのような顔をしたことに私はそれほど関係がないのだろう。もしかしたら少し目が悪くて、私の顔が見えなくて目を細めていただけかもしれない。
けれど。
やっぱり、怖い。
私は人に怖がられ、嫌われ、疎まれる。笑いかけてくれる人もいるけれど、その裏には必ず哀れみがある。
どうしてだろう。いつから、こんなことを思うようになったのだろう。私は、きっと人を憎みたくはないはずなのに。
そっと、空に浮かぶ月を振り返る。
「私の、せい?」
口に出しても、泣かないようになったのはつい最近のことだ。口にしていることで、私自身を慰めているということに気づいたから。
「私が、生まれてきたから?」
だから、私の世界は、私の世界の人は歪んでいるのだろうか。私が生まれてきたから悲しみ、私が生きたから泣き、私が育ったから憎む。
「……違うよね」
私が、こんなものと共に生まれてこなければ。私が普通の人間として元の家に生まれてきたら、私はもっと幸せに。
「ねぇ」
月は細く、それでも鈍く銀色に光る。
「あなたの、せいよ」
左目の端から、ぼつりと落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!