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   目が合ってからどこか固まっていた思考が、それの拍子に自分の元へと戻ってきた。唇を固く結んで、窓から離れる。  きっと、彼がそのような顔をしたことに私はそれほど関係がないのだろう。もしかしたら少し目が悪くて、私の顔が見えなくて目を細めていただけかもしれない。  けれど。  やっぱり、怖い。  私は人に怖がられ、嫌われ、疎まれる。笑いかけてくれる人もいるけれど、その裏には必ず哀れみがある。  どうしてだろう。いつから、こんなことを思うようになったのだろう。私は、きっと人を憎みたくはないはずなのに。  そっと、空に浮かぶ月を振り返る。 「私の、せい?」  口に出しても、泣かないようになったのはつい最近のことだ。口にしていることで、私自身を慰めているということに気づいたから。 「私が、生まれてきたから?」  だから、私の世界は、私の世界の人は歪んでいるのだろうか。私が生まれてきたから悲しみ、私が生きたから泣き、私が育ったから憎む。 「……違うよね」  私が、こんなものと共に生まれてこなければ。私が普通の人間として元の家に生まれてきたら、私はもっと幸せに。 「ねぇ」  月は細く、それでも鈍く銀色に光る。 「あなたの、せいよ」  左目の端から、ぼつりと落ちた。  
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