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   部屋を片付け、私は階段を下りる。小さく、ひとつ下りるたびに階段が鳴く。  きっと、そろそろ主人は女将と一緒に家に戻って、酒に唇を湿らせたりしているかもしれない。この店に一番早く来るのも、一番遅く出るのも、私である。  ゆっくりと一階に足を付いた。  部屋の中からまだ灯の光が漏れている。消し忘れたのかとそちらに足を踏み出すと、部屋から声が聞こえた。戸を開けようと手をかけたが、向こうから聞こえる主人の声がいつもよりも大分怖くて、思わず躊躇う。  そこに、別の声が聞こえた。 「お会いしたいだけだと言っているじゃないですか」 「お断りします、見間違いですよ。うちには女たちと女房がいるだけなんでね。何度言ったら信じていただけるのでしょうか」 「私の目を疑うというのか?」  その声は落ち着いた、しかし高い声だった。穏やかに口調を整えてはいるが、明らかに有無を言わせぬ強さがある。 「……ああ、やはり」  その声が言った。 「ほら、そこにいらっしゃるじゃないですか。私に嘘を仰るなら、この店を潰すことなど容易いのですよ?」  
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