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  「……おや、足を怪我されたのではありませんか?」  追っ手はそう言って、動けない私の前に回る。もう私ができるのは、俯くことだけだった。 「やはり。こんなところに割れ物を捨てるなんて」  そう言われても、じっと目を瞑る。すると、刺すような痛みがするその足を包む、何かの感触。  そっと目を開ければ、侍のものだろうか、白い手拭いで巻かれた自分の足があった。 「あ……」 「相当深く切っていますよ。連れて行ってあげますから、早く来なさい」  そう言って、こちらに背を向け片膝をついたその後姿に、思わず訊く。 「もしかして、先ほどの窓の……」 「ええ、お会いした者ですよ」  その髷を結っていない長い髪を揺らし、侍はこちらを振り向いた。また、慌てて顔を背ける。 「いいえ、そんなご迷惑をかけることなんてできません」 「そんな足で、どうやって歩くのです」 「いいえ、そんなことよりもどうか、あのお店をなくすなんてこと、お願いですからしないでください」  そう続けると、一瞬間があった。そっとそちらを横目で見ると、侍はぽかんとして私を見ていたが、やがて小さく肩を震わせ笑いをこらえていた。  自分でも感覚でわかるほどに、顔を歪ませる。  
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