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   担がれて帰った私に女将は悲鳴を上げて、馬鹿みたいに傷に薬を塗られて痛かった。  主人も女将も侍には傷ひとつ受けていなかった。安心して、良かったと言ったらお前が怪我をしたのにと逆に怒られた。それが、たまらなく嬉しかった。  家に戻ってきて、三人でお茶を飲んで、もうすぐ寝ようと女将が床を作りにその場を離れると、すぐに主人は私に聞いた。 「お前、見られたのか」 「……わからないです。たぶん、夜だから見えないとは思ったんですが」 「近くで顔見られたりはしたか」 「せいぜい二尺くらいの近さだったと思います」  主人には、できるだけ詳しくは話した。本当に、私は刀を突きつけられることさえなかったから。 「あとは何もないか?」 「はい」  明日会うと言われたことだけは、言えなかったけれど。  やがて主人は女将の後を続いて、私は部屋に戻った。  布団に入ると今日最後に飲んだお茶の味がよみがえってきて、すぐに目を閉じた。  何もなくて、よかった。本当に、思う。  そして、もうひとつ思う。もし両親がここにいたら、主人や女将がしてくれたように私の無事を喜んでくれたのだろうか。  どんな豪華な宴の料理にも負けない、あのお茶を飲むことができたのだろうか、と。  
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