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   あまりにも嬉しくて、楽しくて……。  私は日の光に手を伸ばし、そのまま体を外に出してしまった。からだの均衡が崩れ、運動能力なんてまだできているわけがない私の体は、窓の外に落ちてしまったのだ。  それほどまでに怪我をした記憶はないから、大した高さではなかったはずだ。だが、今まで落ちるなんてしたこともない私は、大声で泣き出した。  店と同じ建物の中とは言え表と裏、すぐに両親が気付くはずがなかった。そして、私に最初に気がついたのは不幸なことに兄だった。  不審な子どもの泣き声に庭を覗いた兄は、それはもう驚いただろう。  わんわん泣いている私の側に来て、おろおろしながら服や膝の砂を払い、頭を撫でた。一度奥まで引っ込んでまた出てきたかと思えば、大きな飴菓子を口の中におそるおそる突っ込まれた。 「なあ、お前なんでこんなとこにいるんだ?」  菓子にすぐに泣き止んだ私だったが、その質問の意図がわかるほど大きくなってはいなかった。首を傾げて、まだ兄と知らないその人をじっと見ていた。  
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