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誰も、言葉にはしなかった。たとえ他人の体が私を拒否するのを全身で受け止めていたとしても。それを誰も、言葉には出してくれなかった。
それが、少しずつ雨漏りのように自分の心臓を蝕み腐らせているのはわかっていたけれど、誰も直接私を壊そうとしなかった。
それが今、私は心臓に風穴を開けられていた。
鬼の子というその言葉。誰も口にせず、けれどきっと同じように誰もが抱いているであろう言葉。
わかっていた。
けれど、まさかこんな人間に心を殺されることになろうとは。
「逝くところまでは、送ってやる。苦しくない程度にさ」
今、だったのか。
いつかきっと、もしかすると、他の誰よりも早くいなくなるかもしれないことを、ずっと胸の内の片隅に置いて生きてきた。
誰かに連れていかれるか、自ら逝くのか、それすらわからなかったけれど。
今の生活が体に馴染んで、きっと考えなくなってきていたからだ。
どうせ、とも思う。やはり、とも。
せいぜいここまで、心だけを痛めて、体は何も苦しまず生きてこられたのだから。
私はここで、いなくなるのだ。
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