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   また、とろりと眠ってしまったらしい。  次に目が覚めたのは、厚い布団の上だった。そしてその空気の匂いで、今いる場所を私は知った。  ここは、遊女屋だ。  白粉の香り。灯の匂い。足音。私はこの甘ったるくて、冷たくて悲しい空気を知っている。  起き上がろうと身の傍らに片手をつくと、それだけで全身が鈍く痛んだ。それでもなんとか体を持ち上げて、上半身を起こす。  今、どれくらい時間が経ってしまったのだろうか。まだ夜であるのは間違い無さそうだったが、何もわからないことが不安を煽る。  どちらにしても、帰らなければならない。  ここにいるのは、誰かが助けてくれた証なのか、それとも。わからないけれど、私にはあの小さな遊女屋しか生きる場所はない。  誰もいない、故何の音もしない、だだっぴろい部屋をぐるりと見渡すと、隅に灯された火の側に、小さな鏡台を見た。  布団をゆっくりと除けてそちらに恐る恐る近づいてみる。  ぼんやり揺れる橙の光の中に、薄黒く映る私の顔。あちこちに小さな切り傷や擦り傷がある。  痛みの覚えのある顎の下は、やはり赤い筋が長く尾を引いていた。  
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