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が、叫んだ途端に水球は浮遊をやめて地面に落ちた。
「あ」
そうだった、水球を動かすイメージが消えると落ちるんだった。
「一応成功、ね」
「そうだな、一応」
じゃ次は青地さんの番だね、と言うまでも無くわかっている事を場繋ぎ的に言った。
少女は何も言わずに小さく頷く。ちょっとかわいいとか思ったのは気のせいだ。
「Ri,a ne」
なんか図形描くのメチャメチャ速いんですが。
そして青白い光が図形を素早くなぞる。描く速さに合わせるらしい。いや適性値の違いかもしれんが。
二重の円がそれを囲み、間に文字が刻まれていく。
しかし、その文字は最後まで刻まれなかった。
途中で止まり、前進の後退を繰り返す。間隔が短くなっていき、振動しているように見える。
やがてその震えが止まると青白い光は空中に霧散し、消えた。
「どうなってるんだ」
俺は起きた事が信じられなかった。失敗した。適性値Sだぞ? Eの俺が出来て、なんでコイツが。
少女を見ると、健康的な白い肌は気持ち悪い程青白くなっていて、いつも眠そうな半開きの目は異常なまでに見開かれている。腕は力無く垂れて、体がフラフラしていた。
明らかにおかしい。そう思い先生を呼ぼうとしたが、少女がこちらへ倒れて来るのがわかり、慌てて受けとめた。
「先生、こっちに来て下さい!」
呪文やら成功の歓声やらの騒がしさをブチ抜くような大声で、俺は叫んだ。
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