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俺はなるべく、なるべくゆっくり立ち上がる。考える時間を得るためだ。
「青山修司(あおやま しゅうじ)。当然十五歳。好きな食い物は色々あるが、やっぱり味噌汁が一番だと思う。意気込みは、三年間無事に生き延びてみせるって事で皆さんやらしく」
早口で言い切って、勢いよく座る。衝撃で椅子がガタンと音を立てた。
皆さんが、疑問符を浮かべ、こちらをみながらパラパラと拍手をする。
何はともあれ俺の番は終わったんだ。後はゆっくり聞くだけだ。
三十八人の愉快な仲間達の自己紹介が終わると、先生がプリントを配り始めた。
そこには何やら時間割らしき物が。一時限目が七時半からで八時限目まで、だと……。なんだろう、進学校以上にハードな感じだ。
裏には寮の部屋割りが書いてある。男女でわかれているので、ほっとしたり残念だったり。
「教科書等必要な物は寮の部屋にあります。明日からはこの通りに動いて下さいね」
先生が、きりつれい、と号令をかける。そして、ありがとうございました! の唱和。そんで解散。
俺が帰る準備をしていると、隣の男が話しかけてきた。
「やらしくー」
満面に笑みを浮かべて話しかけてきた黒い短髪の男、の名前は忘れたが、とりあえず返す。
「やらしくー」
「変態だな」
「お前もな」
そりゃそうだ、とソイツは高らかに笑った。
「じゃ、これからもやらしくな。青山」
おう、と返すと、ソイツは荷物を持って走り去っていった。俺もソイツを見習って、風の如く寮へ向かうかな、と思った時だ。
「あなた修司っていうのね」
俺の前方からそんな声が聞こえた。何度か話しながら、親しくならず、名前すら教えあわなかった奴の声。
「覚えておく」
半開きの目で俺を見ながらそう言い放つと、少女はゆっくりと教室の外へ向かっていった。
さて、どういった意味で捉えればよいのやら。
そう思いながら、いまだ談笑の続く教室を後にしたのだった。
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