32人が本棚に入れています
本棚に追加
十時に一度起き、二度寝し、二時に起きて三度寝し、四時半にセットしたアラームより前に起きた。
まだ暁の光さえ無く、手探りで紐を探しだし、引っ張る。
慣れるまではこのぐらい早く起きる方が良いかもしれない。何があるかわからないし。
洗面所というかユニットバスに直行し、顔を洗う。水の冷たさが、俺の意識をはっきりと覚醒させる。
着ていた縦の白黒ストライプの服を脱いで白いプラスチックのカゴに突っ込み、黒い学生服に着替えた。
鞄とカゴを持って、一階に下りる。うろついていると、青い髪を後ろで一つに束ねたエプロン姿の女性を発見した。
「おはようございます、大橋さん」
大橋知里(おおはし ちさと)。L寮の寮母である。俺が声をかけると、人の良さそうな笑顔と共に会釈をしてきた。
「おはよう青山君。普通なら洗濯物はアッチに置いてきてもらうんだけど、今日は預かってもいいわよ?」
「あ、じゃあお願いします」
俺はカゴを預けると、食堂へ向かうために寮の外へ出た。
昨日散々迷ったので、地理はバッチリである。十分程歩くと、食堂と大きく描かれた看板が立っていた。
ガラス張りの建物の中には白い椅子とテーブルが整然と並んでいて、まだ生徒は誰もいないようである。
扉を押し開けると、チリンチリンと鈴の音が鳴った。その音で気付いたのか、ウェーブのかかった茶髪のおばさんが、白いエプロンを揺らしながら走ってくる。
「おはようございます」
「おはよう。まだちょっと早いから、五分ぐらいかかるんだけど……中で待っててくれるかしら」
で、隅の椅子に座って五分の間何もせずホケーっとしていると、
「はい。待たせちゃったし、取りに来させるのは悪いかなって思ってね」
目の前に、ご飯味噌汁焼き鮭漬物お茶という、和食万歳な朝食があった。
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ。じゃ、ゆっくりしていってね」
そういうと小母さんはカウンターの方へ戻っていった。
しかし量が多い。朝は食欲がない俺には厳しいものがある。
二十分ぐらい食べていると、辺りに少しづつ人の姿が見え、一時間かけて食べ終えた頃には大盛況となっていた。
邪魔になるだろうと思い俺は食堂を後にする。
現在午前五時半。さて、どうやって暇を潰すべきか。
最初のコメントを投稿しよう!