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週の明けた火曜日の午後。
長い長い試験期間を終えた真夏のW大構内では、長期休暇に思いを馳せる弾んだ学生達で溢れかえっていた。
呼吸困難に陥りそうな、ねっとりまとわり付く高湿度の炎天下である。
今期最後のゼミを終え、悠一と名残惜しく別れた後、三笠里子は待ち合わせ場所の食堂へ向かった。
淡いピンクのワンピースから伸びたサンダルの足を、いそいそ懸命に回転させる。
一秒でも長くこの紫外線にさらされたら、一瞬で一生消えないシミが出来るんじゃないだろうか。
眩しさに目を細めながら、避難するように食堂に駆け込んだ。
里子は厨房側から席を眺めた。
試験前に比べれば、見事なまでに人口密度が低下している。
キョロキョロ頭を動かしていると、先に相手が気付いた。
黄色いTシャツにGパン姿で、中央付近の席で立ち上がって手を振る今野美晴だ。
里子が駆け寄ると、ショートカットの頭を掻き上げて、美晴は快活に笑った。
「遅かったわねぇ。恋人との別れを惜しみ合い過ぎた?今生の別れじゃあるまいし」
…あら読まれてる…。
里子は苦笑いしながらトートバックをテーブルに置いた。
美晴の向かいにのんびり座って、「私だけがね」と嘯いた。
本来火曜日の4限目は、2人揃って『国際政治学』なる講義を履修している。
ところが、試験が終了した直後の教授は、学生と同じく学習意欲を無くしたらしい。
掲示板に張り出された休講連絡に気が付いたのは、つい昨日の話だった。
「だいたい、別れを惜しむくらいなら、私なんかと待ち合わせせずに一緒に帰ればよかったのよ。それともわざわざ2人きりで呼び出すほどの、なんか重大な報告でもあるわけ?もしかしてやっちゃった?」
あっけらかんと笑いながら首を傾げる美晴の前で、里子は一気に沸点越えを果たした。
頭から見えない蒸気を上げながら、美晴の身も蓋もない言い種に小さく頷く。
美晴はキョトンと真顔になった。
「あらホント?」
「…うん、試験前日に…」
「時期選びなさいよあんた達…」
呆れながら頬杖 をつく。
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