4.全員の夜

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ほぼ伸一の活躍で綺麗に片付いた敷地を後に、11人は浜辺に出た。 玉井家が準備していた分を合わせ、有り得ない分量と化した花火を開封し、面々はしょっぱな壁にぶち当たった。 「なによ。こんなに量あってどこにもロウソク入ってないじゃない。どうすんのよ」 「こっちも入ってませんでした」 ナイロンをゴミ袋に突っ込みながら更羅が顔を上げる。 すぐ背後で伸一が腕組みした。 「焚き火でもして発火元確保する?」 「火事になったらどうすんのよ。コテージの元はただの木よ?」 いえ今野さん。コテージに火が辿り着く勢いなら、俺達は火だるまです。 遠慮がちに小声で突っ込む伸一に更羅が吹き出す。 「ねえお父さん。ロウソク持って来てないの?他の人に貰いに行こうよ」 「貰いに行くったってお前、キャンプにロウソク持ってくる人がそうそういるのかな…」 「誰か炎系の魔法操れないわけ?その辺に灯してくれない?」 「先輩、この世のどこかに1人くらいそんな人が存在するかも知れませんよね。いたら凄いですよね。会ってみたいです」 「千佳真面目にとらないでくれる?」 「ええいゴチャゴチャやかましい!」 突然悠一の低い罵声が轟いた。 その場にいた全員が瞬時に凍りついた。 驚愕した20の視線を痛くも痒くもなさそうに受け止め、仁王立ちで全員を見下ろした。 「火元が無い?ライターがあるだろが。ゴチャゴチャ抜かす暇があればさっさと俺の元へ集え。俺が火元になってやる」 青春は足踏み知らずだぞ。 意味不明な呟きを残すと、悠一はライター片手に輪の中心に屈み込んだ。 悠一の右手をほのかに照らすライターの炎に、四方から花火の先が伸びる。 俄かに七色の熱い花が咲いた。 全員から歓声が上がった。 屈み込んだままの悠一は、次から次に舞い込む来客にひたすら火元を提供していた。 「…黒川くん熱くないのかしらね。度にもろに火花食らってるけど…」 「面の皮どころか体中の皮が人間より分厚いから平気でしょ」 人間よりって橘くん。私の彼氏は人外魔境の生物だとでも? 勢い良く噴射する緑色の炎に染まった顔を、やや膨らませる里子である。
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