ジョーとヨーコ

2/18
前へ
/24ページ
次へ
潮の香り、湿った風、霞む水平線、異国情緒漂う街並み。 ドブ板通りをゆるゆると歩く。 セーラー服の黒人さんの、盛り上がった筋肉のたくましさに。 腰をくねらせて闊歩する、金髪のお姉さんのはちきれそうな胸元に。 すれ違うたび、俺は釘付けになる。 ――横須賀。 かつて、母方の実家がこの街にあった。 夏休みと冬休み、デイバッグに着替えを詰めて、ひとりで泊まりに来たっけな。 花火大会も、米軍基地の祭りも、じいちゃんに連れてきてもらった。 今じゃ悪知恵ついて、色気づいて、可愛げなんてすっかりなくしてしまった。 プールバーでホットドッグをくわえながら、ビリヤードに興じ、女をひっかけちゃ、三笠公園に連れ込んで。 半年前から、フラッとやってきては、リーマンみたいに同じことを繰り返す。 あまり乗り心地がいいとは言えない横須賀線の電車内で、今日はどんな収穫があるか、頬杖ついて考える時間が、俺は何より好きだ。 プラットホームに降り立つと、戦場に赴く兵士みたいに士気があがる。 寄せては返す波の音、様々な人種が行き交う通り、都会の喧騒を忘れさせてくれる、まるで異空間。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加