第2章「主」

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 ちなみに彼は銀髪が素であり、目は赤なのだがカラコンにスプレーでごまかして学校に通っていた。  銀髪に赤目は、『番犬』の証。  もしくは『狂犬』の証だ。  だからこそ隠す必要があった。 (ヒロには、知られたくなかったな)  だが今日はスプレーすらできない。  ヒロとは登校初日の朝。  スプレーする前に会っていたわけで、あんなにむごい事をした手前、バレたくはないのだが……。  まあ、しかたないだろう。  どうせバレるのだから。 (それよりも、お嬢たちがヒロに何もしてなきゃいいけど……)  彼女らが経を監禁した理由は、ただ単なる『お仕置き』だった。  彼が親しげにヒロと話すところを目撃し嫉妬しているわけである。  だが彼は、別に彼女らに忠義を尽くすつもりはなかった。  確かに彼女らには拾ってもらった身だ。  だが、ヒロと出会って、感化されたらしく今の経は自由を求めていた。 (さて)  窓に手をかける。  荷物は最初からない。  もう、ここには戻らない。 「さよなら」  経は、飛び降りた。  
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