prologue

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 ――鉄臭い血溜まりの工事現場。  まだ未完成の、鉄工が剥き出しになっているビルの中腹くらいに腰掛けている影が一つ。  彼の見下ろす先には、小さな影がいくつかあり互いに暴れ回っている。  口元はへの字に歪み、目は、眠たそうに細められている。 「た、助けてくれぇ……!」  自分よりも遥か下からでも聞こえた不良として情けない声。  命乞いをしているらしい。  彼は冷めた目で見下ろすだけだ。  やがて、男には無慈悲にも金属バットが振り下ろされた。 「―――つまんないな」  彼はつぶやいて、下へと降りた。  普通に飛び降りたのだ。  どういう事なのか。  自殺さえできる高さだ。 「ボス!」 「アホ。誰がボスだ」  下に居並ぶ男たちをさっと視線でひとなですれば男たちはすぐに平伏した。  だがそんなモノには興味がないように、彼は血溜まりに背を向ける。 「帰る」  つまらなくなった。  そうつぶやいて。  彼は歩き出した。  
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