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少しずつ、男に近付きながら。
一人一人、血に沈んでいく。
「ひぃっ」
リーダー的存在の男が、腰を抜かす。
「誰がブサイクだ? なぁ、誰が?」
経がカンに障ったのは、ブッサイクという言葉だった。
「テメェらならまだしもよぉ、こいつは絶対違うよなぁ」
狂犬と言われる所以。
紅い目で殺気で、相手を壊す。
凶暴さに染められた表情。
「生きて帰れないと思え」
「て、てめぇは……!………もしかして、あの伝説の………!?」
男はガクガクと震え出す。
アホみたいな顔をしてる、なんて思いながら経は男を見下ろした。
「きょ、『狂犬』だっていうのかよ……」
その呟きの後、経は容赦なく足を振り落とし彼を血に沈めた。
断末魔の叫びすらきこえない。
「行こう、尋」
「………うん」
「経は、『番犬』だったんだね」
「………まあな」
公園のベンチに、二人で座っていた。
夕日はとっくに沈み、もうあたりは暗闇に包まれていた。
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