第2章「主」

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 少しずつ、男に近付きながら。  一人一人、血に沈んでいく。 「ひぃっ」  リーダー的存在の男が、腰を抜かす。 「誰がブサイクだ? なぁ、誰が?」  経がカンに障ったのは、ブッサイクという言葉だった。 「テメェらならまだしもよぉ、こいつは絶対違うよなぁ」  狂犬と言われる所以。  紅い目で殺気で、相手を壊す。  凶暴さに染められた表情。 「生きて帰れないと思え」 「て、てめぇは……!………もしかして、あの伝説の………!?」  男はガクガクと震え出す。  アホみたいな顔をしてる、なんて思いながら経は男を見下ろした。 「きょ、『狂犬』だっていうのかよ……」  その呟きの後、経は容赦なく足を振り落とし彼を血に沈めた。  断末魔の叫びすらきこえない。 「行こう、尋」 「………うん」 「経は、『番犬』だったんだね」 「………まあな」  公園のベンチに、二人で座っていた。  夕日はとっくに沈み、もうあたりは暗闇に包まれていた。  
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