第2章「主」

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 経と尋はココアを飲んでいた。  尋が、おもむろに呟く。 「経は『お嬢様』の『番犬』なんだね」 「少し前まではな」 「少し前までは?」  その経の返答をきき、怪訝な顔をして聞き返す尋。 「ああ。『番犬』は、もう止めたよ」 「………」 「おまえのせいじゃないよ」  下を向いて俯く尋に、経は呟いた。 「俺はむしろ、おまえに感謝してるんだ」  ハハハ、なんて笑う。 「俺はさ、お嬢達に縛り付けられた番犬。元は狂犬だったのにな」  経に狂犬の時の記憶は実はあまりない。  それ以前の一人だった記憶、族を組んでいたところまでは覚えている。  だが、番犬になるまでの記憶がない。  血に塗れた捨て犬のような経に、当たり前のようにお嬢様二人は笑顔を向けた。  彼女らは彼を家に住まわせ、番犬になることを命じたのだ。 「ヒロの笑顔をみてたら、思い出せる気がするんだよ。俺の失われた記憶。そして、感情を―――」 「ふーん」 「………えらくあっさりだな」  真剣に話す経に、さっきまでの態度はどこへやら。  ヒロはあっさりしていた。  
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