第2章「主」

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「だってそれ、過去の話でしょ? だったらもう関係ないじゃん」 「!」 「あたしは、あたしについてくるなら好きにすればいいと思ってるし」  その言葉で、何かがフラッシュバック。 (――なんだ、懐かしい――?)  笑顔。はにかむ笑顔。  記憶の奥に残る、笑顔。  だが、今は。 (こりゃ俺、本気で惚れたな)  懐かしいような不思議な感覚だ。  番犬として意思すら捩曲げてきたというのに今は自ら欲するモノがある。 (誓うよ、俺)  前向きでネガティブ。  そんなヒロに惚れたと認める。  経は、ココアを飲み干した。  勢いに任せて、  月明かりが照らす、  公園のベンチで。  この『狂犬』が惚れた、女の子に。  想いを伝えるために。 「ヒロ、俺―――」  
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