第3章「変」

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「はい?」  尋は聞き返した。  月明かりと街灯が照らす、公園のベンチで思いもよらない言葉をきいたからだ。 「おまえが、好きだ」  経は、つぶやく。  前を向いて、しっかりと。 「…………あたしが、好き?」 「おう。おまえが好きだ」  尋は顔が真っ赤になるのを感じた。  事実、赤くなっている。  今まで生きてきて、こんな言葉を言われた事は、ない。 (ど、どうすればいいわけ?)  まだ信じられないのに。  そりゃ嬉しい。  だけど、まだ、 「嬉しいけど、待ってほしい」  尋は経をみて、精一杯の勇気で言う。 「あたしはまだ、自分も好きになれない。だから、待ってほしいの」  経は、少しも考える間もなく、あっさりと頷いた。  しかも、笑顔で。 「うん。待つよ、俺」  はぁーっと、息を吐き出す。 「あー、緊張したぁー。しかし、断られるかと思ったぞー」  でもよかったぁー、と経は笑う。  街灯の明かりで、少し眩しい。 (経は、真っ直ぐなんだなぁ)  狂犬と言うにはあまりに真っ直ぐだ。  
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