第3章「変」

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「ほんっとアホだね」  俯いている経に、尋は呆れたようにため息をついて言った。 「………あたしの部屋の隣、空いてるよ」 「へ?」 「マンションだけど、あたしの部屋の隣、空いてる」  尋の家はこの公園からもみえる12階建てのマンションだ。  そんなに高くないので、尋はそこで一人暮らしをしていた。  経は「マジ?」と呟くと、携帯を取り出して何処かへと電話をかける。  数分もしないうちに、話は終わった。 「よし、交渉成立」 「……何してたわけ?」  晴れやかな笑顔で呟いたので、尋はとりあえず聞いてみた。 「おまえの隣の部屋は頂いた☆」 「ふーん、そう。………って、え、あんたマジで交渉してたの!?」  あっさり言う経に、突っ込む尋。  だってそうだろう。  まず経は高校生だ。しかも一年生。  いくら狂犬で番犬でも、これには無理があると思うのだが………。 「あんたお金どうしたの?」 「ああ、金ならあるよー。だって俺、無償で雇われてたわけじゃないし」  と、預金カードを翳す。  
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