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「ただいま戻りました」
「あ、キョウっ! やっと戻ってきてくれたんだね!」
「すみません、部下の不始末は自分の不始末ですから」
キョウ―――経。
白無 経。
それが、彼の名だった。
そしてここは広い屋敷である。
「でも許してあげる。ひみが許してあげてってさ」
「ひみが?」
キョウに堂々と話す少女の少し後ろに、小さな肩を寄せている少女がいた。
ちらちらとこちらをみている。
「もー、心配させないでよねー」
「……すみません」
経がそう呟くと、少女はあたし、お風呂入ってくるからー、とつぶやいて、この広い屋敷の階段をあがっていった。
ひみと呼ばれた少女は、いそいそと経に近付いてくる。
「……怪我はない? 大丈夫?」
「大丈夫ですよ。ずっと高見の見物してましたから戦ってませんし」
にこりと経が笑うと、ひみも笑う。
「あのね、経くんのためにクッキー初めて焼いたんだけどね……」
「俺のために、ですか」
「食べてくれる?」
ひみは皿にいれたクッキーを差し出し、控えめに微笑んだ。
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