その瞳は何を映す

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――― 夜の第弐東京の空を走るモノレールの中に二人の男がいた。 二人の男は座席を並んで座っている。 ふと、一人の男が口を開く。 「海上都市の改装が完了したようだな」 その声は小宮のモノだった。その声に反応した、小宮の隣に座る若い眼鏡を掛けた男が言葉を返す。 「完了しましたよ。予定通り、第6攻撃部隊は第3海上都市に移転してもらいます」 「ああ、分かっている。既に移転準備は完了している。明日には新しい基地に移れるだろう。もう、あんなボロ基地は沢山だからな」 「砂麻が可哀想ですよ」 「演習で調子に乗って自分の基地を破壊する奴を可哀想だとは思わん。あいつにはボロ基地がお似合いだ」 「確かに……」 そう言って眼鏡の男は苦笑した。 「……兵士達は今頃、移動中だろう。基本的に兵器は海上輸送船で運搬する。航空機もな。ヘタに飛ばして中華連に悟られる訳にもいかない」 小宮は座りながら背伸びしてそう言った。 「ですね。砂麻は三日後に移転予定です。他にも部隊の戦力が大規模に整備されてますね。大神司令の第4攻撃大隊の所には新型の無人戦闘機が配備されたとか……もう少しで始まる戦争に上層部も必死ですよ」 眼鏡の男がそう紡いだ時、モノレールが減速の末に止まり、ドアが開く。 「駅に着きましたね。では、また生きていたらお会いしましょう。小宮一佐」 眼鏡の男は座席から立ち上がると、ドアへと歩いていく。 「生きていたらまた会おう。久流一尉」 久流は駅のホームに立ち、まだ開いているドアの向こうから小宮に敬礼した。 小宮は敬礼を返す。 ベルが鳴り、ドアが閉まる。 モノレールが発車した。
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