序章

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西暦2313年。 ――世界は崩れた。 人々はその歴史の中で己の欲深さ故に幾度と血に濡れた争いを起こし、極めて短絡的な自己中心性に快適を求め、自らの母である地球を汚していた。 しかしそんな怠惰が永遠に続く訳がない。傲慢な民に神の鉄槌が下る時が来た。 衛星軌道上を飛行するロシア軍戦略人工衛星の突然の暴走。原因は不明である。 巨大な質量を持つそれは、体内に秘める爆弾を嵐の如く撒き散らしながら南極に衝突し、大規模な被害を生み出した。 それに追い討ちを掛けるように鉱物資源確保のため、長久の月日を掛けて牽引してきた小惑星が南極に落下する。 南極にほぼ同時期に二つの大質量物体が衝突。それにより南極の全てが蒸発。巨大なクレーターが出来上がった。 その様を映した観測衛星の映像――七色の光が南極を覆い隠し、黒い柱状の物体がそこから何千と生えていく、轟音が世界に響き黒雲が世界を覆う――を見た人々は恐怖し“大災害”“終末”とそれを呼称した。 その巨大な破壊エネルギーは世界を崩す。 大地震の多発、津波の多発、水位の上昇、天変地異、経済の崩壊、エトセトラ…… 大陸は姿を変え、島々は海に還った。 人々は恐怖し、その恐怖は混乱を生む。 混乱は争いを育て、争いは死と成る。 僅か一瞬の出来事の反動。たった二年で人口の半数が世界から消え去った……。
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