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――西暦2331年
――日本
――第弐東京都(旧長野県)
太平洋に浮かぶ異文化を誇る島国は十八年前の大災害が起因として引き起こされた津波や大地震により、首都東京、関東都市群及び各部主要都市群が壊滅、沈没した。
臨時日本政府は、壊滅した首都を移転する計画を発動。これにより被害軽微である長野へと首都機能を移転した。
しかし被害も多かった。大災害による経済的損害は数百兆にも及び、数千万の人間が命を落としたのだ。
……あれから十八年の時が経ち、新たな日本の首都として建造された第弐東京都は都会の喧騒に包まれていた。
澄み切った空には交差するように何本ものレールが引かれており、青空に網目模様を演出している。モノレール用の線路だ。
そのレールを上手く躱して鳥が飛び交い、時には航空機が空を横切っていた。
――第弐東京都の空に浮かぶ、地面に組まれた鉄柱の上に建てられたモノレール駅に一人の二十代半ばほどの若い男が立っていた。この男の他に駅に人の姿は無い。
男は黒い背広を始めとしたビジネススーツに身を包み、左手に手提げの黒皮の鞄を提げている。その皺の無いスーツの襟には緑色の小さな徽章がついていた。
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