その瞳は何を映す

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そして男を乗せたモノレールは、警笛を短く鳴らして滑走し始める。 東京の空を横断するモノレールが向かう先には灰色の巨大な建物があった。 灰色の対弾装甲で塗り固められた武骨な建造物は二百メートルほどの全長を誇り、その周りには高さは半分ほどだが同じような黒い建造物が混雑している。 モノレールが伝うレールの先端は、建造物の壁に一部開いた空洞内に消えていた。 空洞内はモノレール発着所であり、開閉式のゲートが上部にある。 軍人移送用の特殊装甲材が全面に付けられたモノレールは鈍い音を響かせながら、建造物に吸い込まれるように入っていった。 その灰壁の建造物の名は、 “日本軍中央司令基地” 日本国の軍隊を統括する砦である。 軍用モノレールは中央司令基地発着所内で停止し、レールは基地内レールから分離すると基地から離れたレールと連結し、外部と遮断するようにゲートが閉じる。 一般通行用のレールとなったそれを他の装飾が施してある一般市民用モノレールが滑走し、遠ざかって行った。 ――基地内に鎮座した灰色のモノレールのドアが開いて、涼しい顔の男が出てきた。 服装を軽く整えて発着所から出ると、目的を持った足取りで中央司令基地内を歩いていく。何度か兵士とすれ違う。 数分後。 男はある一室の前に立っていた。 男は右手に下げる鞄から、鈍い光沢のある金属製のカードキーを取り出すと、部屋の扉にある認証機に手慣れた動作で通す。 その後、暗証番号、網膜検査をクリア。 扉のロックを解除した。 男は扉を引き、部屋の中へと足を進めた。
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