Episode6 怖がりな女、誓う男

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  その夜の話。   自室で横になりながら、数時間前の悔しさに涙で枕をぬらす勢いのセリム。   薄暗い部屋の中で色々と考えているらしく、時折ため息を漏らしていた。   しかし、その考えというのも年相応のものではなく。     (帝国の医師になって、さりげなくあいつに毒薬を投与……いや、生半可な覚悟で医療に携わるのはいけないか)     そんな殺し方を考えつつ、"あいつ"――自分の父の顔を思い出していた。   国を改革するのは厳しくても、暗殺は可能と考えている。   その通りで、セリムがアイリスに命令すればあっさりと暗殺は終わるだろう。   しかし、セリムは躊躇っていた。     もしも暗殺すれば、自分も"あいつ"と同じになってしまう。それはまだいい。   自分がいなくなった後のアイリスはどうするんだろうか、あいつがいなくなった後の国はどうなってしまうのか。   それがセリムを踏みとどまらせていた。   ――そう四苦八苦していた時。     「セリム様ー、まだ起きてますかー?」     洗い物を終えたのだろうか。   コンコンと扉が小突かれる音がして、セリムはゆっくりとベッドを起き上がった。  
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