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白銀の剣帝が屋敷の門から外に出ると、左右に広がる大きな道の左に女性が立っていた。
「どうでしたか?」
「やつはただ金に強欲なだけで、貴族と繋がりのない商人だったよ。……はずれ」
「そうですか。報酬はルーン孤児院に送りましたよ」
「んっ、いつもありがとう」
その女性、アイリスにだけ見せる笑顔を白銀の剣帝は浮かべた。
それは学園でも見せない、心からの笑顔。
しかしそれを見た者が、もう一人いた。
「可愛い笑顔ですね。“白銀の剣帝”」
感情のこもらぬ平板な声が後ろから聞こえて、2人は睨むように振り返った。
そこには軍服に似た黒いコートとズボンを着用する男が、無表情なまま2人を見ている。
「リライト……」
「こんばんは。今日は満月の日ですね」
いつもと変わらず淡々と言葉を紡ぐのだが、今日は違う。
ここ最近になって頻繁に出会う彼は、腰に拳銃を携えていた。
「……単刀直入に用件を」
白銀の剣帝の言葉に、律動的な靴音を響かせるリライトは言った。
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