Prologue ―剣帝―

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  「さぁて、どうする?」 凛とした声が、街の大通りを外れた所にある狭い廃屋に響き渡った。 廃屋には3つの人影がある。 「セリム様、そろそろ夜になります。……ギルドも待ちこがれているでしょう」 その影の1つである若い女性が、隣に立つ少年に言った。 若い女性は、男物の黒いスーツを着ていて、後ろで結んだ艶やかな黒髪を風に揺らしている。 「了解。じゃあ追いかけっこも終わりにしようか」 女性の言葉に、少年はニヤリと笑う。 セリムと呼ばれた少年は、隣に立つ女性よりも少し大きい程度で、戦士というよりは魔術師に近い華奢な体型だ。 それに対して、2人の目の前に立つ青年。 黒衣のローブ越しからでもわかるほど、腕や胸の筋肉が発達している。 それほど巨大な体格ではないが、戦士向きのガッチリとした体格だ。 「くそっ……! こんな所で捕まってられっかよ!!」 そう叫んでから、青年は腰のショートソードを抜いた。
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