Prologue ―剣帝―

3/6
19946人が本棚に入れています
本棚に追加
/516ページ
  「指名手配のグライゼル。Cランク級……つまりは騎士レベルか」 兵士よりも上である騎士は、一般人なら剣の修練を10年積めば、なれる可能性もあると言われている。 つまり才能とかなりの努力を必要とするレベルだ。 しかしセリムは、目にかかる雪のように白い髪を掻き上げると、不敵に笑った。 「――3秒だ」 その言葉が何を意味するのか、グライゼルも黒髪の女性も理解しただろう。 グライゼルは額に青筋を浮かべて、ショートソードを下段に構えた。 怒るのも当然。 セリムの手には鍔の無い剣が握られているが、白いシャツに黒いズボンとラフな格好だ。 身を守る鎧も、ガントレットも、レガースも、なにもない。 唯一、黒縁の眼鏡の奥に光る紅い瞳だけはグライゼルを威圧していた。
/516ページ

最初のコメントを投稿しよう!