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「私の教育が間違っていたんでしょうか……」
「あ、あれ……アイリスって怖いの苦手だよ、ね」
「はい。だからセリム様がそんなこと言うなんて……」
――それなのに、どうして俺がトラウマに?
怖い話をしてトラウマを作るはずが、逆にトラウマを作られてしまったセリム。
二人は弁償することなく、すぐに鍛冶屋を出て行ってしまった。
弁償も考えたのだが、奥の親方がそれを断ったという。セリムの目には、親方が震えていたのも見えていた。
――それからも、ことごとく計画は潰されていった。
セリムが唯一嫌いなナスを買わせまいと、細菌や寄生虫の話をしたが、一蹴。
魔法の話も、生活の仕方も、様々な形で怖い話をしようとしたが、一蹴。
その道中で、半ばやけになったセリムは「計画が水泡に帰す……」と自嘲気味に呟いていた。
セリムは野望を全て打ち砕かれて、がっくりと自宅に帰宅する。
「最後まで俺は荷物持ち、か……」
ソファーに背中を預けるセリムには哀歓が漂っていた。
そして、自嘲しつつ大きくため息を吐いた。
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