Episode6 怖がりな女、誓う男

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  「助かりましたよ。なにせ王都まで遠いですからね。たくさん買い込めました」   「どういたしまて……。役に立てて嬉しいヨ」     どう考えても抑揚を欠いた棒読みに、アイリスは小首を傾げていた。   どうしたんですか、と。     「今日は美味しい料理を期待しようかな……」   「ええ、セリム様がやたら強調していたナスを買いましたからね」   「え」     セリムは絶望の中に突き落とされる。   彼がナスをどのくらい嫌いかといえば、その辺の虫を焼いて食べたほうがいいと言うくらいだ。   しかし、そんなセリムを尻目に、アイリスは歌うように料理メニューを呟いていった。     「んー、焼きナスのスープ。ナスのアンチョビチーズ。後は……」   「ねぇ、アイリス……今までそんなの作ったことなかったよね……?」     今まで、セリムが嫌いだからと"なるべく"ナス料理は控えてくれていた。   ニッコリと微笑むアイリスは、肯定の意として言葉を返さなかった。   そして鼻歌混じりに料理を作り始めてしまうのだった。     アイリスの料理を食す上での無言のマナー。   残さず食べる。しっかり味わう。     そしてその日、セリムは涙目になりながら夕食を咀嚼するのだった。
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