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「なぜ見捨てたんだ!!」
幼い少年の悲痛な叫びが応接室に響いた。
広く華麗な装飾に満ちた応接室で、白を基調とした皇族衣を着ている少年が叫んだのだ。
年は10歳前後だろうが、端正な顔立ちからは気品が滲み出している。
彼こそ後に【白銀の剣帝】と呼ばれる少年、セリムだ。
そしてその前の椅子に、もう1人誰かが座っている。
「……見捨てた、だと?」
重圧な声を発したのは、身長が190センチメートルはあると思われる中年の男だった。
短い髭の生えた顎を動かして、更に言葉を続ける。
「私がいつ、誰を見捨てた」
その威圧感は凄まじく、並大抵の人物なら震え上がるだろう。
しかし少年は憶することなく叫んだ。
「僕の家族をだ! 知らないとは言わせない!!」
少年は力強く睨みつけると、白髪の全てを後ろに流したオールバックの男は、含み笑いを浮かべた。
「くくっ……。そう熱くなるな。冷静に状況を話してくれるかな? ――第二位皇位継承権を持ちしセリム・ソフ・カルディナ」
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