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「あ……あの、おはよう。智久(ともひさ)君」
「あぁ。おはよう」
ふいに後ろから投げかけられた、なんともよわよわしい挨拶に、俺は後を振り返らずぶっきらぼうにこたえた。
すると、彼、梅宮(うめみや)はそそくさとげた箱から取り出した上履きを履く。それからすぐ、階段を上っていく乾いた音がした。
まったく。アイツもよく毎日毎日俺なんかに話かけてくるな。まぁ小学校からの付き合いだから、シカトするほうが気まずいのか?
バカらしい。どうせ教室じゃ自分に被害が飛び火するのが怖くて、まともに俺に話しかけられない癖に。
心のなかで毒づきながら、俺は上履きに履き替え、これまた通学とどうように重い足取りで教室に向かう。
階段を上り、トボトボと自分の教室に向って歩く俺。教室の前まで来ると、中からはガヤガヤと賑やかな話声が聞こえてくる。
俺が教室に入ると、先ほどまで賑やかだった教室が一変、皆俺を見ながらコソコソとした会話になり、完全に馬鹿にしているような、とても醜い笑みを浮かべ始める。
わざとかどうかはわからないが、いたるところから俺に対しての悪口が聞こえてくる。
まぁいいさ。いつものことだ。
俺はなぜかひっくり返されている自分の机へと向かう。
くだらねぇ。こんなことして何が楽しいのかねまったく。
すぐさま机を元に戻し、俺は腕を枕代わりにして眼を閉じた。寝ていれば、時が早く過ぎていく気がして楽だった。
「おい」
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