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「ほら……よ!!」
勢いよく投げられた銀の腕時計が、ものすごいスピードで地面へと向かっていく。
なぜだろう。目で追えるようなスピードではないのに、時間の経過が異常なまでにゆっくりと感じ、腕時計が地面に向かっていく様子が、俺の目に鮮明に映し出されていて。
そして、ガシャンという音と共に、破片が宙を舞う。
「わりぃ。手がすべっちまった」
ヒビの入った腕時計が、俺の眼の中へ飛び込んできた。
その時。俺の中で何かが崩れ落ちていくのを、確かに感じた。
「う……うあああああああああ!!」
俺は自分でもビックリするぐらいの力を振りしぼり、抱えられた腕を振り払う。そして、壊れてしまった腕時計を、やさしく持ち上げる。
見ると、ガラスの部分は粉々に砕け、長針は折れて、短針はねじ曲がっている。もう、どうしようもない。
ハハ……ハハハハハ。だめだ。もう何もかもどうでもよくなっちゃった。
俺は腕時計を大事に抱え、力なく立ち上がる。そのままフラフラと教室の扉に向かい、廊下に出て行った。
いきなりの俺の行動に、動きが止まっていた三人の男子だったが、茶髪の男子がハッとして俺に向って叫ぶ。
「お……オイ! てめぇどこいくんだよ!!」
あぁ、俺どこ行くんだろう。自分でもわかんねぇや。そうだな。楽になれる場所に行こう。
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