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「ここは……どこだ?」
気づくと俺は辺り一面真っ白な世界にいた。ただただひたすら地面が広がっているだけの白い世界。他には何もない。ただそれだけ。
本当にここはどこなんだ? 俺は死んだはずじゃないのか? もしかしてここがあの世?
「はじめまして。桜井智久君」
いくら考えても出ない答えを、どうにか導きだそうと思考をめぐらしていると、どこからともなく女性の声がした
ん? どこにだ?
辺りをキョロキョロ見渡すが、人のような物はみられない。ふと地面に眼をむけると、丸い影が一つ、ゆらゆらと映っていた。
「こっちだこっち」
俺はまさかと思い、声のする方向に視線を向けた。
マジかよ。
視線の先、頭を少し上に向けた空中に、彼女は立っていた。いや、浮いていた。
頭から生えた二本のねじれた真紅の角。黒いスーツを身にまとい、腰まである長いストレートの綺麗な黒髪が、ゆらゆらと中を泳いでいる。不思議と恐怖はなかった。
「あ、あの~~どちら様ですか?」
俺のその問に、彼女は切れ長の目で俺を見つめ言った。
「私は閻魔だ」
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