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サンサンと太陽が照りつける夏、私がそんな地上に身を投じてから一週間が経った。
時間の経過とは実際よりも早く感じてしまうということを、改めて実感させてもらった。
私の、私たちの場合はなおさらそのように感じやすいのかもしれない。
地中での生活が途方もなく長いのに比べ、地上での生活は驚くほど短いのだから、当たり前と言えばそうなのだろう。
だけど、そんな時間の尊さに嘆いている時間すら私たちには与えられてはいない。
地上に出て羽化したその瞬間から、私たちは子孫を残すために歌を歌い、その相手を見つけなくてはならない。それが私たちに課せられた使命なのだから。
もちろん私もそれにもれることなく歌い続けた。
そして君に出会ったんだ。あの時のことは今でも鮮明に覚えている。
丘の頂上にたたずむ一本の大木。とても心地のいい風が吹くその場所からは、下にある町やそのさらに向こうにある海までもが一望できた。
昼は人々でにぎわう商店街が、夕暮れ時には空一面を赤く染め、自らが放つ光を海に反射させながら沈んでゆく太陽が、夜になれば民家の明かりや外灯がまるで星のように輝いているのが見えた。
こんな素晴らしい場所なのに、私以外にはこの大木にとまっている仲間は一匹も見当たらない。
私がただ一匹で、一日とめどなく姿を変えていくその景色を見ながら歌い続ける日々を、地上に出てから毎日送ってきて六日目、ようやく一匹のメスが話しかけてきた。
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