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なんでだろう。確かに私は地中にいる時から、私たちの地上にいられる時間の短さに疑問を抱いていた。
だが私はいつしか考えることを止め、自然の掟に身を任せることにしていた。なぜなら答えが出たとしても、地上にいられる時間は変わることはないのだから、考えるだけ時間の無駄というものだ。
そう自身の考えを伝えると、彼女は言った。
「私はね、耐えられないからだと思うの」
どういうことだい? と私が彼女に問いかけると、彼女は「見て」と言って私から視線をはずし、空へと向けた。
その時の彼女の横顔は、とても美しかったが、どこか寂しさを思わせた。
私はもう少し彼女の顔を見ていたかったが、ゆっくりと私も彼女と同じ方向に眼をやる。
そこには、薄く青い空を背景に、オレンジ色に染まった雲がプカプカと自由に浮かんでいた。
地上に出てから毎日見てきたが、何度見ても飽きることはない。それほど美しい夕焼け空を見つめながら、彼女は私に語りかけた。
「とても素晴らしい光景でしょ? 地上に出なければ決して見ることのできない景色だわ。でもね、あなたも知っていると思うけど、地上は美しいことばかりじゃないの」
彼女はうつむき、悲しそうに語る。
「私たちをエサにしている動物はたくさんいるし、人間は面白半分で私たちを捕まえては狭いカゴに無理やり押し込めたり、殺して楽しんだりするの。そんな外敵の存在に毎日怯えながらの生活を何年も、あなたは続けることができる? 少なくとも私には無理ね。だから神様は私達に、一週間という短い時間を与えたんだと思うの」
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